今回のカフェ・ミナプルでは、登別市地域おこし協力隊のNupurさんが、登別の自然とエゾシカとの共生をテーマに、自身の移住経験や現在の活動について語りました。エゾシカの生態や歴史的背景、鹿肉の利活用、そして増えすぎたことによる被害の実情が説明されました。さらに、鹿の解体処理施設の事業承継や認証取得、子供たちへの学習プログラム、鹿肉のPR活動など、多岐にわたる取り組みが紹介されました。
開催内容
テーマ 登別の自然とどうつきあう? ─ シカとの共生を考える
講 師 増田 好希(登別市 地域おこし協力隊)
聞き手 白川 勝信(登別市観光交流センターヌプㇽ 学芸員)
参加者 14名(内、オンライン5名)
おかし 鹿パイ(トラットリア・クレド)
エゾシカの生態と歴史
増田さんはまず、エゾシカの生態と北海道での歴史について詳しく説明しました。繁殖期や1日5キロにも及ぶ食物量、冬季の越冬地への移動といった基本的な生態に加え、日中の森に隠れる「スマートディア」と呼ばれる賢い鹿の行動についても言及しました。
また、歴史的背景として、明治時代初期に鹿肉の缶詰輸出のために年間10万頭以上が捕獲され激減したこと、その後の保護政策によって現在は再び年間10万頭を超える捕獲数が維持されている状況が説明されました。
エゾシカによる被害と現状の課題
続いて増田さんは、エゾシカの増加がもたらす深刻な被害について報告しました。農業被害が年間51億円、林業被害や交通事故による被害が25億円に上るなど、具体的な数字を挙げてその甚大さを説明しました。また、登別温泉での出没増加による人間との距離の接近や、マダニが媒介する感染症のリスク、対策の担い手である狩猟免許保持者の減少傾向といった課題にも触れました。
地域の資源としての利活用と啓発活動
被害対策だけでなく、エゾシカを地域の資源として活用する前向きな取り組みについても語られました。増田さんが事業承継を予定している市内の解体処理所が、北海道の認証施設として認定されていることを報告。認証施設での適切な処理による安全性やトレーサビリティの重要性を強調しました。
また、市内の学校給食で鹿肉を提供した事例や、鹿の角の形で年齢を見分ける方法などを子供たちに教える学習プログラムを実施していることを紹介。地域の恵みとして鹿肉の魅力を伝えるため、料理研究会やイベントも開催していると述べました。
狩猟と処理に関する質疑
会議の最後には、ハンターの働き方について質問がありました。増田さんは、現状として多くのハンターが農業や他の仕事と兼業しており、狩猟だけで生計を立てている人は少ないという実情を説明しました。





イベント概要
日時 2025年8月20日(水)18:30〜
会場 登別市観光交流センターヌプㇽ
主催 登別市観光交流センターヌプㇽ 友の会 ミナプル
協力 登別国際観光コンベンション協会